命を支える生命維持産業を次の世代へ。14代続く農園をリスタートさせる若谷社長にインタビュー!
今回インタビューした方は、有限会社若谷農園の社長、若谷さんです!
【若谷 茂夫】
埼玉県立杉戸農業高等学校を卒業後、農業に就農。当時まだあまり取り入れられていなかったビニールハウス300坪を建設し、農薬の使用を最小限に抑えた安全性の高い小松菜の周年出荷を始める。若い農業従事者育成と未来の農業を考え「有限会社 若谷農園」を設立。現在はさらに規模を広げ、農業に従事している。
今回は未来の農業の担い手を育成する若谷農業の若谷社長にインタビューしました!まずは若谷農園さんの会社と事業について、教えてください。
僕は、江戸時代から14代続く農園を継いだ後、2002年に法人化して有限会社若谷農園を設立をしました。将来の人材育成を見据えて設立したのですが、当時は家族労働が当たり前でしたから、まだ珍しい法人化だったんですよ。
今現在は、農薬の使用を最小限に抑えた安全性の高い小松菜を1年を通して7回程出荷し、さいたま市内の100校以上の小中学校に納品をしています。安心・安全に食べてもらうために、化学肥料の使用を減らす努力をしているんですが、この高品質な小松菜がつくれるのは、ビニールハウス栽培だからこそなんです。ところが、当時はまだ珍しかったので、父にはとても反対されました。台風でハウスが傷つくこともありましたが、高品質な小松菜を1年を通して届けたいという想いで頑張ってきました。
また、江戸時代から作っているクワイも栽培しています。よく正月料理に入っている作物ですね。これは非常に全国的にも珍しい野菜の1つなんですよ。
食べる人の安心安全のために努力されてきたんですね!実際に食べた人の感想はどうですか?
学校の子どもたちが「おいしい!」と言ってくれるんです。それだけでなく、料理をする調理員の皆さんが非常に新鮮な小松菜だといってくれますね。包丁を入れたときにパリパリって活きのいい音が聞こえるんです。残菜率も低くて、うれしい限りで励みにもなります。
また、さいたま市内のスーパーはもちろんですが、品質と鮮度の良さを買っていただき、料亭にも納品しています。子どもたちの世代から、親世代を超えて、高齢者の世代にも僕たちの小松菜が届くことはとても光栄です。
子どもたちもおいしく食べてくれるのは、嬉しいですよね。
法人化されたきっかけは若手の人材育成のためという事でしたが、現在、日本では食料自給率の低下や、後継者不足といった問題をよく聞きます。そのような農業の現状についてどうお考えでしょうか。
大変な時代に入っていると思います。日本の農業はほとんど高齢者が行っていて、平均年齢が70歳に達するような非常に深刻な人材不足の状態なんです。また、カロリーベースにはなるんですが、食料自給率は37%という低さです。僕はこれからさらに低くなっていくと危惧しています。その危機を止めたいし、何とか止める手助けをしたいです。
私の親戚も農業を営んでいますが、同じように後継者問題を抱えています。若谷農園さんではこのような問題に対してどのような取り組みをされているんですか?
そうですね、人材育成のほかに食育活動や耕作放棄地再生を行っています。
食育活動では、さいたま市内の小・中学校の生徒に農業体験をしてもらい、農業の大切さを学んでもらっています。また、従業員さんとしてうちの農園に来ていただいて、ノウハウを学んでもらった方も大勢います。この若谷農園で思う存分勉強していただいて、これからの日本の農業者として貢献してほしい想いで日々励んでいます。若谷農園の人事理念は、「人材の育成」なんです。この育成が僕たち内輪の中だけで終わるのではなく、育成した従業員が外に出て、農業界を盛り上げてくれたら嬉しいです。
耕作放棄地とは農業者の高齢化や若者の農業離れなどによって、過去に作物が育てられていたのに今はもう利用されていない土地のことなんです。この耕作放棄地は高齢化によって、今後さらに増えていくと予想しています。なので、僕たちは放棄されている農地を利用して、野菜を栽培しています。この取組みが、これからの日本を支えられたらと思っています。
次の世代にも繋ぐ取組み、本当に素晴らしいですね。若谷社長にとって、農業とはどのようなものでしょうか。
農業とは僕たちの命を支える食べ物を生産している職業なんですよ。当たり前だけど、僕たちがこうやって毎日生きていられるのは、食料があるからなんです。後継者不足、耕作放棄地がさらに深刻になると外国からの食料をもっと供給しなくちゃいけない時代になります。
農業の皆さんのイメージは、自然相手で収入的にも体力的にもきつくて、いいイメージではないような気がするんですよね。でも絶対に誰かがしないといけないし、すべてが大変なことばかりではないんです。
そこで、僕は農業という言葉を「生命維持産業」だと言っています。この言葉が広まると、国民の皆さんも「大事な職業だよね」って気づいてくれて、もっともっと農業者を元気にさせるように、「私たちみんなで応援していこうね」ってそんな気持ちになるんじゃないかなと考えています。
最後に、私たち学生に何かメッセージはありますか。
先ほども申し上げたのですが、農業は私達の命を支える「生命維持産業」です。農業は大変・きついというイメージがあるかもしれませんが、農業が命を支えていることを忘れないでほしいです。生きていく中で、農業にも興味をもってもらうことが、僕たち農業従事者にとってとても嬉しいことです。そして、美味しく野菜を食べて元気に過ごしてほしいです。
農業という私たちの生活に欠かせない生命維持産業を忘れず、生活していきたいと思います。本日はお忙しい中、お話を聞かせていただきありがとうございました。
農業は間違いなく私たちの生命維持産業ですね。若谷社長は、2022年11月に秋の勲章「旭日単光章」を受賞していますよね。そのときのお気持ちをお聞かせください。
僕は、今まで50年以上営農に励み、県の法人協会やさいたま市農業委員会の会長を歴任してきました。効率的な生産の実現のため、地域での基盤整備事業の実施に向けて尽力してきましたが、今まで出会ったすべての人のおかげで受賞できたと思っています。ここで満足せず、今回の受賞を励みに精進していきたいです。
受賞、本当におめでとうございます。では今後、若谷農園をどのような農園として育てていきたいでしょうか。
そうですね。さいたま市は現在、130万人を超える都市です。若谷農園の食べ物を美味しく味わっていただけるような、また知っていただけるような農園にしたいです。そして、私たち若谷農園と都市生活者と楽しい交流を持ちながら、お互いに元気の出るような農園を目指していきたいと思っています。