多様性に満ちたインドネシア人の才能を活かし、これからの日本に彩りを与える矢部社長にインタビュー!
今回インタビューした方は、株式会社StarBoardの社長、矢部 将勝さんです!
【矢部 将勝】
早稲田大学 政治経済学部卒業、Kenichi Ohmae Graduate School of Business修了。経営管理修士(MBA)。国家資格キャリアコンサルタント。
大手海運会社に入社し独立後、ムスリム向けの旅行及び食のバリアフリー化を実現する株式会社MDJを設立、2019年にSETIA株式会社の人材部門と自社を統合する形で、新たにセティア マネジメント株式会社(現株式会社StarBoard)を設立。
今回は外国人採用でインドネシア人の活躍を支援する矢部社長にインタビューしました。
まず、社長の学生時代のことを教えてください。
学生時代、夢中になっていたことはありましたか?
僕の場合、学生時代は海外を1人旅していました。今でこそコロナの影響で海外にはなかなか行けないですけど、僕のときは普通に海外旅行にいけていましたからね。当時は周りの友人たちも世界中旅していたし、僕も1人で28か国旅しました。学生の休みって2ヶ月近くあるじゃないですか、だからアルバイトをしてお金を貯めて外国を旅して、また日本に戻ってくるみたいなことを繰り返していた学生時代でしたね。
素敵な経験ですね。
たくさん旅をされた中で1番良かったと思う国はどこですか?
もう25年以上前の話なので、当時行ってる人が少なかったという意味で言うと、クロアチアとかスロベニアですかね。
僕自身、この会社を立ち上げる前は海運会社にいたんですよ。その海運会社を目指したきっかけも、バックパッカーの経験がきっかけなんです。
イギリスに留学していた時に、ポーランドの友達がいたので、会いに行ったことがあるんです。まずポーランドまで飛行機で飛んで、そこからバスでずっと南下して、そしてスロベニアを越えてクロアチアに行って、イタリアのリエカという港町に行きました。
そこから船に乗ったんですけど、お金もかかるので船ではデッキで寝泊まりしてたんですよ。そのとき、船の1番後ろの船尾という場所に行ったら、海をかき分けていくときに見える、大きな船が辿ってきた白波の航跡が見えたんです。朝日も出ててものすごく綺麗で感動しました。僕は単純なので、船ってめちゃめちゃかっこいいじゃんとそのとき思って、大学3年のときに船会社に行こうと決めました。
就活では商社もいくつか内定はいただいたんですけど、海外が好きで、海外に関わる仕事がしたかったのと、その船会社の方が商社よりも採用の人数が少ないので、船会社に入った方がいろんな海外に行くチャンスがあるんじゃないかなと思って入社しました。
就職のきっかけはバックパッカーの思い出だったんですね!
では、その船会社から今の会社を立ち上げたきっかけは何でしたか?
当時の名古屋(名古屋勤務時代の話)はまだ海外から沢山の人が来ていた時期で、イスラム圏のヒジャーブ(頭にかぶるスカーフ)を被った人が町中にいました。インドネシアの方々と関わるうちに、彼らの職に関する仕事をしようと思ったんです。そして具体的に何をしようか考えたときに、日本で仕事をする上でのルールを外国人にも理解してもらおうと思ったんです。ルールをすぐに検索できるアプリや、ガイドをビジネスにできないかな、と思って動き始めました。
その事業を進める中で、イスラム圏の人たちの声を聞いた方がいいよねって思って、マレーシアやインドネシア料理屋さんを名古屋の中で、探し始めました。そして探している中で、日本に15年住んでいるインドネシア人の女性に出会いました。
彼女の周りにはいつも多くの人がいて、聞いていると、ご飯を食べに来るインドネシア人の、職場や学校の悩みを話す相談相手になっていたんです。それを見て、相談を聞く人の重要さを感じました。今後日本に働きに来る外国人はもっと増えるだろうから悩みを聞くことを仕事にしようと思ったんです。そこで彼女に話してみたところ副社長を引き受けてくれました。そこからインドネシア人材に目を向けるようになったんです。
会社設立は2019年1月で、コロナ流行と被っていますが、やはり影響は大きかったですか?
そうですね。今も影響は続いてるのですが、当時は思い描いたようには上手く行かなかったです。マーケット調査をして、いよいよ始動だなって体制が整ったのが2019年の12月なんですよ。コロナが、中国で流行り始めたのがほぼ12月じゃないですか。僕のビジネスは、外国人の人材紹介なので、インドネシアの人たちに日本に来てもらって、企業に繋いでお金が出るっていう仕組みです。
どのような仕組みか具体的に教えてください。
まず、人材紹介でよくイメージされるのが、マッチングの部分だと思うんです。働きたい人と人を雇いたい企業をマッチングさせて、誓約した瞬間に、企業側が紹介会社にお金を払う仕組みです。いわゆる、企業と人を繋ぐこの中間マージンを抜くっていうビジネスなんですけど、この時代はもう終わると思っています。なぜならAIが出てきたことで、オートマッチングできちゃうからです。企業の求める要件がその人の履歴書にあったら、人間が調べなくたってAIができますよね。
そこで、AIにとって代われない、人間にしかできないビジネスは何かを考えたら、このマッチングの前と後の過程だと思ったんです。前の部分は教育です。要はそれぞれの企業さんの職種や業種によって違う欲しい人材を丁寧にヒアリングして、お客さんのニーズにあった人材を我々が代わりに育てますという仕組みです。やっぱり人を育てるというのはAIができないことです。特に外国人だと苦戦するのが言葉です。言葉をちゃんと覚えていないと仕事は絶対できないので、日本語のスキル教育をするようにしました。
また、僕らは介護や福祉の領域に人を多く入れているのですが、そういった介護的なスキルも教えるというのも、教育の部分です。次にマッチング後の部分は何かっていうと、日本のことを知らない外国人の、生活のサポートです。1番分かりやすいところだと、外国人が日本に入国してから出国するまでの間の全てのサポートだと考えてもらうといいと思います。
例えばコロナ関連だと、「待機期間中は外に出ないでください」など指示があるじゃないですか。
公共交通機関も使えないので、空港に迎えに行き隔離場所まで連れて行くことですね。さらに隔離している間もコンビニなどには行けないので、食べ物を買ってあげるというのがサポートです。日常生活でも、日本のごみ分別のルールを教えてあげることもします。近隣住民とトラブルになることを防ぐためです。生活面での決まり事をインドネシア語が話せるスタッフがちゃんと説明をしています。
そういう、マッチングよりも教育の部分とアフターサポートの部分にすごく力を入れています。このような仕組みに変えたことで、教育がスタートした時点でお金は出ます。そうやって、なんとかコロナの間も持ちこたえた形ですね。今後もそれをベースにどんどん進めていけたらなと思います。
日本に来る外国人の方にとっても心強いですね。
そのようなサポートによって、離職率も減ってきましたか?
どうですかね。母数が増えてるのであまり変わらないかもしれないですね。ただ、他の会社全体と比べるとうちの会社の離職率は少ないという自負があります。それは人材との関係性をすごく長く作ることに努めているからです。今の日本は、入社3年以内に3分の1が離職する時代ですが、それは日本人に限らず、外国人も一緒だと思うんですよ。
日本で働きたいと思っている人がたくさんいるのは嬉しいことですね。
経営する上での理念や大切にしていることはありますか?
この会社のカンパニーミッションは、「日本を多才で多彩に。」です。いろんなタレントを持った才能豊かな人たちが日本に彩りを与えてくれると信じていて、その考えを創業当時から大事にしている会社なんです。
「多様性」って言葉はみんな使うんですけど、概念が難しくて、1人1人個性を大事にしましょうということなんですけど、組織の中で1人1人が各々のことをやっていたら当然、うまくいかないですよね。当たり前ですけど、僕らが目指していることは、ある一定のルールや共通認識の下で個性を発揮していくということなんです。当然、いろんなタレントを持っている多様性を持った優秀な人材に来てほしいんですけれども、日本の中のルールをしっかり守って覚えてもらった上で、日本で活躍してほしいという事なんです。
したがって、インドネシア人に日本のやり方を学んでもらい、知ってもらうことを大事にしています。逆に日本人も、インドネシアのことを知らない人たちがすごく多いので、インドネシアのことを知ってもらうセミナーを定期開催しています。インドネシア人を受け入れる企業には「やらなくて大丈夫」と言われても、絶対やるようにしています。
僕がインドネシアのイメージは?と聞くと「ナシゴレン」って言葉が出てきたり、ほとんど知らない人は「カレー」って答えるんです。インドとの違いがあやふやな人もいるんですよ。インドネシアの人と一緒に働いてもらうために、僕らから「インドネシアはこういう国で、こういう国民性ですよ」とちゃんと伝えることが、インドネシア人が入社した後に、定着する可能性を上げると思うので、そこは経営する上で意識しています。
では、従業員を採用する上で重要視している部分を教えてください。
これは外国人の採用と一緒で、性格をすごく大事にしています。性格っていうのもすごく抽象的で難しいんですけど、人の話が聞ける人ですね。これは大事ですね。僕はキャリアコンサルタントの資格も持っているのですが、みなさん相談を誰かにする時って、答えはその人の中にもう既にあると思うんです。そして、相談をしている人は必ずしも答えを授けてほしいわけではないと思うんです。何か悩みはあるけど、自分自身が悩みの全部に気づかず、モヤモヤしていて、言語化できないから話を聞いてほしいことの方が多いんですよね。
そのときに、その人に答えを言うのではなく、気づきに繋げることを大事にしているので、人の話を聞けるかどうかを重要視しています。
また僕自身は、インドネシア人と実際に会って話を聞くことも重要視しています。簡略できるところは、効率を高めるためにも、どんどんzoomを使ったらいいと思うんですよ。ただ、相談事や悩みは、話す間合いでも気づくことができるので、逃したくないんです。
直接会うことで話の幅も増えますよね。
今回のインタビューもzoomの予定から、出張に合わせてご来社いただき、顔を見てお話しできることに感謝しています。
では今後日本で働くインドネシア人に対して行っていきたいことはありますか?
悪いこと、損することに搾取されることを止めたいです。何も知らず日本に来て、搾取されることって多いんです。日本に好きで来ているのに、日本を嫌いになって、国に帰るということを減らしたいです。日本を嫌いになって帰ることは、日本にとっても本当に不幸なことであって、その人個人だけのみならず、その人の子供は親を見て、「行かない方がいいね」ってなっちゃうかもしれない。これは日本にとってのマイナスですので、自国から働きに来る人のサポートを徹底していきたいです。
働く外国人にとっても、日本にとってもプラスに動いてほしいですね。
最後に、私は大学3年生で就活を控えてるんですけど、学生に伝えたいことはありますか?
チャレンジを恐れないでいいよっていうことをすごく伝えたいです。インドネシアの物価って、日本の5分の1なんですよね。言い方が正しいか分からないけど、経済的に貧しくて大学に行ける人も半分いかないんです。そして、大学を卒業した人たちでさえ、初任給が3万5000から4万円の世界なんですよ。日本と大きな差がありますよね。
でも、インドネシアで大卒の子は、「将来日本で働いてお金を貯めて絶対会社作ってやる」って言うんです。チャレンジを1ミリも恐れてないんです。彼らはむしろ、自分の将来に対して自信と明るい想像しかしてないんですよ。組織の中に属そうみたいな感覚がなく、今ここでスキルとお金を貯めたものを将来自分の事業として大きくさせたいって言うんですよね。
経済的には豊かじゃないかもしれないけど、精神的にはものすごく豊かだし、夢があって、そういったキラキラした学生を見ていると、もっと日本の若者も夢を言っちゃっていいんじゃないのって感じます。言うことは自由だし、言うことから始まるんじゃないかな。これは学生だけに限らなくて、僕らみたいなおじさんの世代も一緒で、口にして、もし失敗したらってことばかり考えるんです。
僕自身も会社を作る前は、不安も恐怖心もありました。だけど、人の失敗なんて、そんな自分が思うほど誰も注目してないし、興味もないですよ。人の目を必要以上に気にして、やらないことの方がリスクなんじゃないかなと思います。早めに何か挑戦して、経験を積むことは、早めに成功するためのただ唯一の道であると僕自身思うので、今の学生さんにもチャレンジを恐れてほしくないです。
外国人材や日本の将来について、本当に素晴らしいお話をお伺いできました。本日は本当にありがとうございました。
問題は、人間関係のこじれだと考えています。そして入ってみたら思っていた仕事のイメージと違ったというミスマッチだと思います。そこに、お金の問題がついてきて、この3つが主な離職理由だと考えています。お金の部分は、1番最初に条件提示してるので、変えようがありません。変えられる部分は、仕事に対する自分のイメージの分離と、人間関係です。
特に難しい人間関係の改善は、コミュニケーションを繰り返しとることで対策しています。一方的に話す「報告」ではなく、「相談」ができる環境を作りですね。例えば、従業員の方が「来月辞めます」と言うと、意思が強くあってもう何もできないんです。でも相談ができる環境を作っておけば、打ち手ってまだあるんですよ。悩みを潰していくことができます。企業側も採用コストをかけて人材投資をしているので、すぐやめてもらったら困ります。だからこそ、離職を防ぐために、人材サポートメンバー6人で約180人のインドネシア人のサポートをしています。
日本で働きたいインドネシアの方はどのように見つけているんですか?
これは日本自体の力が大きいです。僕自身現地にもよく行っていますが、日本で働きたい外国人はたくさんいます。
多様性に満ちたインドネシアの才能を活かし、これからの日本に彩りを与 えていきたいと考えています。個性と個性が混ざり合いながら様々な価値観を受容し進化していく社会。私たちは人材業を通じて誰もが認められ、認め合える社会を目指していきます。